「アンダーグラウンド」「パパは、出張中!」などで知られる旧ユーゴスラビア出身の鬼才エミール・クストリッツァが1981年に発表し、同年のベネチア国際映画祭で新人監督賞を受賞した長編デビュー作。サラエボに住む少年が大人へと変わっていく時間を、みずみずしい感性と猥雑なまでのエネルギーで描いた青春ストーリー。 サラエボで家族と暮らす少年ディーノ。生活は苦しいのに共産主義を信奉する父親は、酔っぱらっては子どもたち相手に政治談議を繰り返し、日々のやりくりに疲れた母親は、そんな夫にいつもあきれ顔。父の話に興味がないディーノは、夜な夜な離れの小屋にある自室にこもって、ウサギのペロを相手に催眠術の特訓をしていた。さらには地域の若者たちでバンドを組むことになり、その練習も始まった。そんなある日、外国映画に登場するドリー・ベルという名のストリッパーに心を奪われたディーノは、町のごろつきのシントルから見知らぬ女を匿ってほしいと頼まれるが、彼女の名はなんとドリー・ベルというのだった。一つ屋根の下で暮らすことになったふたりは、いつしかひかれ合うようになるが……。 ユーゴスラビアの内戦による長い混乱状況により著作権が棚上げ状態になったことなどから、日本では長らく幻の作品とされていたが、2023年、製作から約40年の時を経て劇場初公開が実現。