詩人や映画監督、批評家として活躍し、2023年4月に他界した福間健二の長編監督第7作。家や学校から自由になりたい中学2年生の少女と、妻を亡くした77歳の元船乗りの老人の交流を描いた。 中学2年生の七海は母親と2人暮らし。七海という名前をつけてくれた父親は、ずっと前にどこかに行ってしまった。そんな七海は今日も学校に行かず、川べりで夫を亡くしたばかりという岬という女性と知り合い、心を通わせる。一方、若い頃に妻を亡くした77歳の元船乗りの寺田は、老年にさしかかったことで不安を感じることが増え、老人たちが集まって屋外で飲み食いする「憩いのベンチ」に参加するようになっていた。ある日、たまたま通りかかった七海と知り合った寺田は、「憩いのベンチ」を抜け出し、七海と2人で時間を過ごす。そしてその夜、寺田の前に亡くなった妻の綾子が現れる。 主人公・七海役を幼いころから舞台などで活躍しているくるみ、寺田役を福間監督自身が演じた。そのほか、福間監督の「秋の理由」にも出演した正木佐和が岬と綾子を1人2役で演じ、寺田の親戚の次郎役を映画監督で俳優の守屋文雄が務めた。2023年3月に本作が完成した直後、福間監督は脳梗塞で倒れ、治療中に肺炎を起こして同年4月に他界。本作が遺作となった。